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わんわんメモリーズ

  • 佐香 厚子のアイコン画像
  • 2009.07.31
  • 佐香 厚子
愛犬モアが息を引き取ったあと、ペットの葬儀をどうしたら良いのか、私はあちこちに電話をかけました。最初に問い合わせた業者は男性が出て「4時半までに来て!ちょうど他の方と一緒に火葬できるから燃料代が浮く」と言われました。夫に電話して、私は急いでそこにモアを運ぶ、と告げました。すると夫は珍しく怒り出しました。「そんな業者、行かなくていい!」と。
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また電話帳をめくり、別の業者に電話しました。受付の方は女性で、丁重に「何時でも構いません。お待ちしています」と言ってくれました。動転していた私は、事の善し悪しも判断できなくなっていたのでした。

リンゴ畑の山のその奥に、小さな火葬設備がありました。電話に出た女性の方が、丁寧にモアの遺体に花を散らしてくれました。会社を抜け出してきた夫、三女と共に、家族3人でモアを春の空に見送りました。

待合室でお茶をいただいた時です。そこにあった盛岡のタウン誌をふと手に取り、目に飛び込んできたのは「み裾野は雲低く垂れすゞらんの白き花さきはなち駒あり」宮澤賢治の初短歌だそうです。広大な岩手山の風景を31文字に収めた、という賢治研究家の記事でした。すずらんの咲く風景が鮮明に浮かびました。

先に逝ったペット達が、天国のちょっと手前の虹の橋で飼い主が来る日まで待っている...という「虹の橋」の話も有名ですが、臆病だったモアは、他のワンニャン達と一緒に虹の橋にはいられないはず。

モアはすずらんの咲く山のふもとにいる、私を待っている、とその時から思えてなりません。

漫画家 佐香厚子
犬とその飼い主、そして訓練士の心温まる物語「マリエにお手!」(小学館発行)をはじめ、数々の人気漫画を執筆。詳しくはこちら

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